三重大学ユネスコスクール委員会 朴 恵淑委員長のユネスコスクール活動 「COP26(グラスゴー気候合意)報告;気候危機とカーボンニュートラル社会形成〜環境・SDGsのトップランナー三重大学」                                                                                   

朴 恵淑(三重大学特命副学長(環境・SDGs/ ユネスコスクール委員長))
COP 26(グラスゴー気候合意)・カーボンニュートラル社会三重.pdf

1. 国連持続可能な開発目標(SDGs)
 2015年9月の国連持続可能な開発サミットにおいて、「持続可能な開発目標(SDGs; Sustainable Development Goals)」が採択されました。「持続可能な開発目標(SDGs)」は、2000年のミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、17の目標と169のターゲットとなっており、2030年までに全世界の国・地域における全てのステークホルダーの協働によって達成すべき最優先アジェンダであります。SDGsは、「誰一人取り残さない-No one will be left behind」を理念として、持続可能な社会を実現するための重要な指針となり、行政・企業・学校・市民など全てのステークホルダーが連携するグローバル・パートナーシップが求められています。SDGsは、持続可能な開発の重要な要素として、5つのP、「人間;People」・「地球;Planet」・「繁栄;Prosperity」・「平和;Peace」・「パートナーシップ;Partnership」を挙げています。

2. 国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21;Paris Agreement―パリ 協定)と伊勢志摩サミット・三重県のSDGs未来都市選定
 2015年12月のフランス・パリで開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において、「パリ協定(Paris Agreement)」が採択されました。日本は、2030年に二酸化炭素 -26% 削減(2013年度比)を表明し、特に、民生部門において -40% 以上の削減が前提となっていることから、環境意識の向上を図り、省エネなど身近なエネルギー削減活動が最も注目されました。2015年9月の国連持続可能な開発サミットにおいて「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択された直後に開催されたCOP21において、「パリ協定(Paris Agreement)」が採択されたことにより、地球温暖化防止への世界各国の具体的対応が求められることとなりました。地球温暖化防止に向けて、1997年12月に京都で開催されたCOP3において「京都議定書(Kyoto Protocol)」が採択され、先進国における温室効果ガスの削減が義務化されました。さらに、世界の全ての国・地域での温室効果ガスの削減が必要不可欠となっていることから、毎年、国連気候変動枠組条約締約国会議において議論が続けられましたが、総論賛成―各論反対の議論との平行線を辿る締約国会議において、世界の全ての国・地域が参加する地球温暖化防止の決議は長期に渡って議論されましたが、COP26の「パリ協定:Paris Agreement」によって、世界の全ての国・地域が地球温暖化防止に寄与することとなる大きな転換点となりました。
 三重県との関係においては、2016年5月に開催された「伊勢志摩サミット」において、2015年9月の「持続可能な開発目標(SDGs)」の採択及び同年12月のCOP21での「パリ協定(Paris Agreement)」採択の流れを汲み、「伊勢志摩サミット」のアジェンダには、経済・環境(地球温暖化)・エネルギー・ジェンダーが取り上げられ、G7による地球温暖化防止への積極的な取り組みが世界に発信されました。
 2019年12月には、三重県の鈴木英敬前知事による「ミッションゼロ2050みえ〜脱炭素社会の実現を目指して」が宣言され、三重県は、東海地域初の脱炭素社会宣言を行ったSDGs先進県となりました。「ミッションゼロ2050みえ〜脱炭素社会の実現を目指して」の実現に向けて、三重県の産官学民のパートナーシップによる推進体系として、「トップチーム」「アクションチーム」「若者チーム」が構築され、朴 恵淑特命副学長(環境・SDGs)兼ユネスコスクール委員長は、「トップチーム」のメンバー及び「アクションチーム」のリーダーを務めています。2020年7月に、三重県は内閣府の「SDGs未来都市」に選定され、そのテーマは「若者と創るみえの未来"持続可能な社会の構築"」となっています。

3. 国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26;グラスゴー気候合意 (Glasgow Climate Pact)」
 2021年10月31日から11月13日にかけてイギリス・グラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)において、開催期間を1日延期しながらの激論の末に、「グラスゴー気候合意(Glasgow Climate Pact)」が採択されました。世界は気候変動(Climate Change)の時代を超えて、気候危機(Climate Crisis)時代となっていることに共通認識を共有することに成功しました。気候危機の時代に突入した主な要因として、化石燃料に依存するエネルギー構成による影響が大きいことから、脱化石による再生可能エネルギーへの転換、気候危機の緩和(Mitigation)や適応(Adaptation)の両方からのアプローチが必要不可欠であり、また、2030年の持続可能な社会(SDGs)及び2050年のカーボンニュートラル社会(CN)の形成のために、世界の全ての国は、バックキャステイング(Back-Casting)による次のような目標を掲げ、実効力のある対策を講じることとなりました。
(1) 1.5度
 世界の気温上昇を産業革命以前に比べ1.5度未満に抑えるための温室効果ガス(GHG)の削減を強化することとなります。2030年までに世界の温室効果ガスの45%削減(2010年比)を目指し、2050年までにネットゼロ社会(カーボンニュートラル社会)を構築することが決まりました。世界各国は、2030年までの温室効果ガスの削減目標について、日本が-46%削減、アメリカが50-52%削減、EUが55%削減目標を言及しました。世界は、気候変動(Climate Change)時代から気候危機(Climate Crisis)時代に入ったことを認識し、科学(IPCC第6次評価報告書)と政治の融合を図り、世界各国の2030年削減目標(NDC; Nationally Determined Contributions)の見直しを行い、2025年に提出することとなっています。
(2) 脱化石(石炭)
 化石燃料(石炭)のフェーズアウトを加速させます。先進国は、2030年までに石炭などの化石燃料への依存を廃止し、途上国は、2040年までに廃止することが議論されたが、段階的廃止の表現となりました。電力の脱炭素化を目指し、再生可能エネルギーの比率を上げることやイノベーションによる対応が求められています。
(3) パリ協定のルールブック完成
 カーボンプライシングなど市場メカニズムによる、二酸化炭素排出枠「クレジット」の議論が活発に行われ、市場メカニズムには、2国間クレジット制度及び国連主導型取引が議論されました。
(4) 資金援助
 先進国が途上国への支援資金を提供し、2024年までに新しい目標を作ることとなりました。
(5) 地球
 温暖化の悪影響への適応能力を向上させるため、グローバル適応目標が検討されることとなりました。
(6) 若者育成
 グローカル人材育成を積極的に行うこととなりました。特に、COP26の期間中の11月8日に、オバマ元アメリカ大統領による特別講演会が開催され、オバマ元大統領から、「若者よ、気候危機になんの対応を講じない政府や企業に怒りを示し、熱い情熱と冷静さを併せ持つ若者のアクションが必要な時期になったことに気づき、行動しなさい。」という強力なメッセージが発せられました。私は、COP26会場においてオバマ元大統領の演説を聞きながら、伊藤正明学長による「三重大学環境・SDGs方針」において、三重大学は、地域共創大学として、カーボンニュートラル社会形成にトップランナーとしての大学の社会的責任(USR)を果たす決意を国内外に発信していることから、三重大学の時代を先取る先見性に胸の熱くなる感動を覚えました。
(7) パートナーシップ
 政府と自治体、非政府(産業・学界・市民)のパートナーシップによる、カーボンニュートラル社会形成に向けた取り組みが必要不可欠となります。COP26の期間中は、本会議だけでなく、産業界、学界、環境NGO、特に、国連機関、政府関係者、非政府組織による、エネルギー、EV車、若者育成に関するサイドイベントが数多く開催されました。
(8) 気候危機と健康被害
 WHO(世界保健機関)は、気候危機と健康被害による報告を行い、地球温暖化に伴う熱中症などによる死者が年間約25万人、大気汚染による死者は年間約700万人が予想されること、特に、経済発展が最も顕著なアジア諸国における環境悪化による健康被害が最も懸念される地域であるとの警告を出していました。私は、WHOアジア太平洋環境保健センター(WHOACE)所長でもあることから、環境問題と健康被害はコインの表と裏の関係にあることを認識し、地球温暖化問題や大気汚染問題による健康被害を防ぐために、世界各国は緊密な国際環境協力に向けて前へ進むよう積極的に呼びかけました。

4. COP26(グラスゴー気候合意;Glasgow Climate Pact)と三重大学の環境・ SDGs人材育成とグローカル人材育成への期待
 私は、三重大学の教員・国際環境NGOの代表・WHOアジア太平洋環境保健センター(WHOACE)所長の立場でCOP26に参加しました。COP26の期間中に、世界各国の政府代表団(日本、韓国など)及び世界緑の気候財団の総裁、産業界、国際環境NGOとの懇談会に参加し、伊藤正明学長による「三重大学の環境・SDGs方針」に基づく、トップランナーとしての三重大学の教育・研究・社会貢献の柱となる、環境・SDGs活動・グローカル人材育成などについて積極的なアピールを行いました。また、ユネスコスクールが目指す「持続可能な開発のための教育(ESD)」を駆使した、三重県のみならず、日本、アジア、世界の持続可能な社会創生及びカーボンニュートラル社会形成に向けた、三重大学の社会的役割(USR)についても積極的なアピールを行いました。
 三重県唯一の総合大学として地域の知の拠点となる三重大学は、2007年11月に、日本の国立大学初となる、全学部・研究科の一括ISO14001認証取得を行い、最高環境責任者の学長による基本方針策定に基づく環境マネジメントシステムの構築・運営を行っています。2021年4月1日から伊藤正明学長の就任に伴い、三重大学は、地域共創大学としてカーボンニュートラル社会形成のトップランナーとなるため、教育・研究・社会貢献・業務運営の合理化を図る「三重大学環境・SDGs方針」を策定しました。三重大学は、日本の国立大学において、環境・SDGs基本方針を制定、公表する最初の国立大学となっています。「三重大学環境・SDGs方針」は、和文・英文・和文(ルビあり)の3種類で作成され、多言語による国内外へのアピールやその対象を幼児、小中高大学生、留学生にも広げる戦略を立てています。
 また、三重大学は2009年8月に、三重県初のユネスコスクールとして登録され、三重県内のユネスコスクール支援活動を積極的に推進しています。「持続可能な開発のための教育(ESD)」の8分野及び「持続可能な開発目標(SDGs)」の17の目標達成に向けて、教育・研究・社会貢献の全ての部分において全力で関わっています。特に、今世紀最大の環境問題である気候変動(地球温暖化)への全教職員及び全学生の関わりは最も重要なイシューとして捉えています。2022年11月〜12月にエジプトで開催されるCOP27において、教職員のみならず、学生代表の派遣を実現させ、三重大学の環境・SDGsの取り組みのアピールはもちろんのこと、世界のユース会議において三重大学生の積極的なコミットを検討しています。

5. 四日市公害の教訓から学ぶ「四日市学」とSDGs-ESD
 三重県は、1970年代の日本の高度経済成長を支える一方で、四日市コンビナートからの大気汚染に伴う四日市公害(四日市ぜんそく)によって、健康被害や生態系の破壊など、環境問題による甚大な被害を受けた地域であります。環境法や環境政策による環境改善を図る一方で、企業は環境技術のイノベーションを起こし、先進的な環境技術を生み出し、企業の社会的責任(CSR)を超えた社会的価値(CSV)を高め、地域の環境改善と日本企業の高い競争力のWin- Winの関係を構築しました。CSV (Creating Shared Value)は、企業にとって負担になるものではなく、社会的な課題を企業の強みで解決することで、地域と企業の持続的な成長へと繋げる共通価値・共有価値となります。
 朴 恵淑特命副学長(環境・SDGs)/ユネスコスクール委員長は、2000年4月に、四日市公害の発生メカニズム・人間を含む生態系への影響・環境政策・環境教育・国際環境協力の5つの柱を立てて、人文社会科学・自然科学・医学との総合環境科学となる「四日市公害から学ぶ『四日市学』」を構築しています。ユネスコスクール活動を通じて、過去の負の遺産から現在・未来への正の資産に変えた有効なツールとして、「四日市公害から学ぶ『四日市学』」をさらに発展させることが期待できます。
 COP26において、WHOは化石燃料を主とする経済や産業活動によって、地球温暖化と大気汚染による健康被害がますます増えることとなり、世界において地球温暖化による死者は年間約25万人、大気汚染による死者は年間約700万人に達するとの報告書を出しています。特に、21世紀の最大の経済的発展地域となるアジア諸国での甚大な健康被害について警鐘を鳴らしています。四日市公害の教訓を生かした「四日市学」は、アジア諸国や新興国において、環境と経済のバランスの取れた、持続可能な社会形成に最も有効なツールとなります。
 SDGsの究極的目標である「誰一人取り残さないーNo one will be Left」及び大変革(Transforming for Our World)をもたらすためのイノベーション(Innovation)の成功事例は、四日市公害を経験し、四日市公害を克服した三重県・三重大学で学ぶことを国内外へ伝え、かつ、産官学民とのグローバルパートナーシップによる世界の持続可能な社会・カーボンニュートラル社会形成に貢献することとなります。

6.国内外の環境・SDGs講演会・シンポジウムでの成果(2021年度)
6-1. 国内
(1) 三重大学生・大学院生・留学生への「地球温暖化・エネルギー環境教育」意見交換会
 「三重大学ESD-SDGsクラブ」の大学生、大学院生、留学生の10名を対象に、地球温暖化・エネルギー環境教育の意見交換会を行いました(11回;2021年4月〜2022年2月)。
(2) 韓日経済名古屋フォーラム(基調講演)「ポストコロナ時代のグローバル環境協力と中部創生戦略」2021年7月13日主催;駐名古屋大韓民国総領事館
 ものづくりの中部地域におけるウィズ・アフター・ポストコロナ時代を見据えた、グローバル環境協力による持続可能な社会及びカーボンニュートラル社会形成のトップランナーとなるための戦略について基調講演を行いました。特に、中部地域の中心産業の自動車産業においてポストコロナ時代のEV車戦略とエネルギー問題についての内容が中心となりました。
(3)「環境とイノベーションの未来〜カーボンニュートラルの先にあるサステイナブルな未来へ」基調講演
 「2050年カーボンニュートラル社会に向けた世界の動向「COP26現場レポート」 2021年11月29日 主催;愛知・名古屋スタートアップエコシステムコンソーシアム 共催;中日新聞社  COP26(グラスゴー気候合意)に参加し、国内外の産官学民のステークホルダーとの懇談を通じた経験に基づく、2030年の持続可能な開発目標(SDGs)の達成及び2050年のカーボンニュートラル社会形成に向けた、中部地域の環境とイノベーションの未来に向けて、次世代を担う若者育成の重要性及び地球温暖化防止のための再生可能エネルギーについて基調講演を行いました。
(4)「日経SDGsフェス in どまんなか」において「地方共創大学三重大学の環境・SDGsの先進的取り組み」2021年12月1日 主催;日本経済新聞
 4月1日の伊藤正明学長の就任に伴う、「三重大学環境・SDGs方針」の作成・公表に伴い、三重大学が地方共創大学としてカーボンニュートラル社会形成におけるトップランナーとなるための、教育・研究・社会貢献・業務運営の合理化を図る戦略について講演を行いました。特に、ネット・ゼロのカーボンニュートラル社会の根幹となる、地球温暖化対策として再生可能エネルギー源の確保や有効活用、次世代の環境人材育成について基調講演を行いました。
(5)「日本サステイナブル・キャンパス推進協議会(CAS-Net JAPAN 2021)」において「地方共創大学三重大学の環境・SDGsの先進的取り組み〜エネルギー環境教育」2021年12月4日 主催;CAS-Net JAPAN
 日本の31大学及び46企業が加盟している、日本サステイナブル・キャンパス推進協議会(CAS-Net JAPAN)の2021年次大会において、CAS-Net JAPANの副会長である朴 恵淑三重大学特命副学長(環境・SDGs)は、COP26(グラスゴー気候合意)について紹介し、地球温暖化問題はエネルギー問題と直結していることから、クリーンエネルギーによる持続可能な社会及びカーボンニュートラル社会構築について基調講演を行いました。特に、次世代の環境人材育成をCAS-Net JAPANの重要アジェンダとする提案を行い、CAS-Net JAPAN 2022年の年次大会は、11月に三重大学で開催することが決まりました。
(6) 三重県地球温暖化防止活動推進センター推進員研修において基調講演「COP26(グラスゴー気候合意)〜気候危機とカーボンニュートラル社会」2021年12月7日 主催;三重県・三重県地球温暖化防止活動推進センター
 三重県地球温暖化防止活動推進センター推進員は、約80名が推薦され、地球温暖化問題に対する啓発普及活動を行っています。推進員への研修会において、朴 恵淑(三重大学特命副学長(環境SDGs)/三重県地球温暖化防止活動推進センター長)は、基調講演「COP26(グラスゴー気候合意)〜気候危機とカーボンニュートラル社会」を行いました。特に、脱化石(石炭)に関するテーマを中心に、再生可能エネルギーの積極的な導入及びEV車時代を見据えたカーボンニュートラル社会形成への世界的動向、日本の動向について講演を行い、参加者との意見交換を行いました。推進員は、三重県の小中高校での環境教育の講師を務めることが求められていることから、国連の地球温暖化(気候変動)に関する動向及び日本、三重県の動向について研修会を行いました。
(7) みえ環境フェア2021「オール三重でCOOL CHOICE」のDVDのコンテンツに「四日市公害とエネルギー政策、エネルギー環境教育」を収録
 毎年、地球温暖化防止月間の12月に、三重県最大規模の環境イベントの「みえ環境フェア」が開催されました。しかし、2021年度は、新型コロナウイルス問題で対面式の開催ができず、三重県・三重大学・三重県地球温暖化防止活動推進センターが中心となって「オール三重でCOOL CHOICE」のDVDを作成し、三重県の代表的CATVのZTVを通じて、延40回の放映を行いました(2021年11月1日〜12月31日)。「オール三重でCOOL CHOICE」のDVDにおいて、朴 恵淑(三重大学特命副学長(環境・SDGs)/三重県地球温暖化防止活動推進センター長)は、四日市公害の教訓を生かしたエネルギー政策、エネルギー環境教育の重要性を強調しました。また、「三重大学ESD-SDGsクラブ」の活動やコロナ禍での学校教育の変化(オンライン教育など)について紹介しました。
(8)「COP26(グラスゴー気候合意;Glasgow Climate Pact)報告・講演会」2021年12月14日 主催;三重大学・都市環境ゼミナール
 COP26(グラスゴー気候合意)の国際動向及び日本、アジアの地球温暖化対策への動向、2030年の国連持続可能な開発目標(SDGs)、2050年のカーボンニュートラル社会形成に向けた気候変動の緩和と適応、化石燃料から再生可能エネルギーへのエネルギー転換、若者育成、産官学民とのパートナーシップについて講演を行いました。特に、グラスゴー気候合意の主要なポイントとなる、先進諸国及び途上国の2030年までのCO2削減目標を取り上げ、現状の世界の削減目標が100%達成できると仮定した場合でも、世界の平気気温の上昇は約2.7度の試算となり、COP26(グラスゴー気候合意)の1.5度の目標を大きく上回ることとなり、さらなるCO2削減に向けた世界の約束を強める必要があることを指摘しました。例えば、日本;-46%(-50%)、EU;-55%、イギリス;-68%、アメリカ;-50%(-52%)、中国;-65%(GDP当たり)、インド;-33%(-35% GDP当たり)など、さらなるCO2削減が必要不可欠であることが明らかになっていることを強調しました。日本は、世界最大経済成長が見込める中国、インドなどのアジア諸国における地球温暖化対策へのリーダーシップが求められることから、自国でのCO2削減と共にアジア諸国との国際環境協力を通じたCO2削減の戦略が必要不可欠であることを指摘しました。戦略的取り組みとして、アジア諸国との国際環境協力を通じたエネルギー政策の推進、次世代環境人材育成などの具体的取り組みについて、三重大学で2021年7月に結成した「三重大学環境・SDGs学生プラットホーム」の構築に伴う成果に言及し、その成果を生かした、日本、三重県のみならず、中国、インド、タイ、インドネシアなどアジア諸国との国際環境協力が必要不可欠であることを指摘しました。
(9)「令和3年度 三重大学省エネ及び環境マネジメントシステム研修会」2022年1月27日 主催;三重大学国際環境教育研究センター
 三重大学の教職員、学生を対象に、三重大学省エネ及び環境マネジメントシステム研修会を行いました。三重大学の「MIEUポイント制度」及び「省エネ積立金制度」などによって、2021年度のエネルギー使用量及びCO2削減率(原単位)は、目標の8%を上回る-11/8%の実績をあげたことに言及し、省エネ活動への意識啓発の重要性及び三重大学の多数を占める学生(約7,000名)を対象に、環境・SDGs人材育成、グローカル人材育成が必要不可欠であることを強調しました。
(10)「カーボンニュートラルコアリション;地域ゼロカーボンワーキンググループ会合」2022年2月4日 主催;文部科学省・経済産業省・環境省
 文部科学省・経済産業省・環境省の連携による日本の国公立大学及び私立大学がメンバーとして入っている「カーボンニュートラルコアリション」には、5つのワーキンググループで構成されており、三重大学の朴 恵淑特命副学長(環境・SDGs)は、地域ゼロカーボンワーキンググループのメンバーとなっています。2022年2月4日に開催された、地域ゼロカーボンワーキンググループ会合において、三重大学のカーボンニュートラル社会に向けた地域連携について発表を行いました。特に、地域連携の好事例において、中部電力(株)との協働事業の「エネルギー環境教育」を通じた、SDGs-ESD連携による次世代育成の成果報告を行いました。また、三重大学生・大学院生・留学生を対象とした、持続可能な三重創生の担い手となる世界へ通用するグローカル環境人材育成について成果報告を行いました。
(11) 三重大学SDGs研究会及び末松則子氏鈴鹿市長と三重大学生、大学院生、留学生との「COP26(グラスゴー気候合意)報告及び鈴鹿市のカーボンニュートラル社会形成に向けて」の懇談会実施 2022年3月6日 鈴鹿サーキット
 三重大学SDGs研究会の代表である、朴 恵淑特命副学長(環境・SDGs)によるCOP26(グラスゴー気候合意)報告及び末松則子鈴鹿市長と三重大学生、大学院生、留学生の4名との鈴鹿市のカーボンニュートラル社会形成に向けての懇談会を行いました。鈴鹿市の環境教育、鈴鹿サーキットに代表される鈴鹿市の特色を生かしたEV車の普及、SDGsへの取り組みについて意見交換を行いました。特に、鈴鹿市のEV車の普及、水素ステーションの整備など、カーボンニュートラル社会に向けた時代を先取る鈴鹿市の戦略について、末松市長と朴特命副学長、学生との継続した懇談会を行うこととなりました。
6-2. 国際
(1)[The Next Normal: Sustainability Actions for Higher Education During COVID-19] Asian Sustainable Campus Network (ASCN) Conference 2021 2022年1月22日 主催:ASCN(Thailand, Bangkok)
 日本(CAS-Net JAPAN)、韓国(KAGGI)、中国(CGUN)、タイ(SUN)の約200の大学が加盟している、アジア・サステイナブル・キャンパスネットワーク(ASCN)の第3回国際会議が、2022年1月22日に、タイ・バンコクにおいて開催されました。コロナ禍による対面式会議が困難なことからオンラインによる国際会議となりました。コロナ禍での高等教育におけるニューノーマルによるSDGsの戦略的展開について、朴 恵淑特命副学長(環境・SDGs)による発表が行われました。COP26(グラスゴー気候合意)の成果、日本を含む世界各国のCO2削減目標、三重大学の環境・SDGs方針、エネルギー環境教育の成果、地球温暖化問題と健康、SDGs、ウィズ・アフター・ポストコロナ時代のニューノーマル社会に向けた戦略、2022年11月〜12月に開催予定のCOP27(エジプト;シャルム・エル・シェイク)での活動提案などを行い、活発な討論が行われました。

2021年度は、コロナ禍によって活動に制限がかかっているにも関わらず、COP26(グラスゴー気候合意)への参加、国内外の講演会及びシンポジウムに対面式の参加とオンラインによる参加など、ハイブリッド形式の「ユネスコスクール活動」を行いました。今後、アフターコロナ・ポストコロナ時代に向けて、ピンチをチャンスにかえる機会として捉え、SDGs-ESDを中心とする、三重大学のユネスコスクール活動において、国内外のステークホルダーとの緊密な連携によるさらなる発展的展開を行う予定です。